茨城大学医学部 ―― 医師等資格確認検索について

 長いこと「筑波大学ってのは東京にあるんかな?」と思っていた。筑波大学の前身は東京師範學校――東京教育大学ということは知っていたので、まあ普通に考えると東京にあるんだろうなぁ、と思っていたのである。

 誤解が解けたのは大学に入ったあたりで、古今和歌集の常陸歌に「筑波ねのこのもかのもに蔭はあれど君がみ蔭に増す蔭はなし」とあるのを見て「あっ筑波って茨城か」と気づいた。誰かに話す前でよかったと思っている。

 一県一医大構想の結果、各都道府県にひとつは医学部があるが、いくつか分かりにくいものがある。たとえば岩手県には私立の岩手医科大学があるが、国公立の医学部はない。栃木大学に医学部はなく、かわりに自治医大と獨協医科大学がある。埼玉医科大学は私立で、埼玉には他に防衛医大がある。川崎医大は神奈川県ではなく岡山県倉敷市。そして茨城にあるのは茨城大学医学部ではなく筑波大学医学群。
……こう見てみると「分かりにくい」のではなく、単に私が東の地理に疎いだけかもしれない。


 数年前になるか、ネットサーフィン中に偶然なことから妙なページを見つけたことがあった。横浜のみなとみらいにある(らしい)「井上眼科医院」という眼科クリニックのウェブサイトである。

 体裁はそれなりに整ったサイトなのだが、医師紹介を見ると悉くデタラメである。

顔写真はフリー素材の切り抜きなのだが一応モザイク処理をかけた

 まず「神奈川大学医学部」「岩手大学医学部」「茨城大学医学部」が全て存在しない。逆に実在する山口大学医学部が含まれているのが少し不思議である。大学卒業後、みな判で押したように卒業大学の医局に入局し助手を務め、その後この医院に入職しているのも不自然である。あと指摘しておくと、こういう所では卒年を併記するのが普通である。

 よくよく見てみると、電話番号が012-345-6789であるし、住所も「みなとみらい1-1-1」とパシフィコ横浜のど真ん中であるから、fakeであることは明らかである。しかし誰が何の目的でこんな架空の医院のウェブサイトを作ったのだろうか。何かの練習なのか、それとも……?


 このサイトに載っている医師の名前を厚生労働省の医師等資格確認検索で検索してみると「条件に該当する医師等は存在しません」と表示される。Fakeであるからあたりまえなのだが、あるとき*なんの気なしに自分の名前を入れても「該当なし」になるではないか。おやおや私も偽医者だったか、と首をひねったのだが、これはどうも海外留学時に届け出ができなかったせいらしい。
* 2024年

 医師は二年に一回(奇数年)「医師届出票」を提出し今どうしているかお上に通知することになっている。まあまあ勤務医をしていれば事務方がやってくれるが*、留学や休業で所属先が日本にないと、当然ながら未届け扱いになり、「該当なし」になってしまうのである。
* 令和五年からオンライン申請ができるようになったので、自分でやるのが一般的になった

 ただよく考えると私は去年*オンラインで届け出を既に行ったはずである。にもかかわらず「該当なし」というのはどういうわけだろう?
* 2023年1月

「どうも自分は偽医者らしいぞ」

とぼやいていたら、「えっ!センセイ、偽医者だったんですか?やっぱり!」と教授秘書さんが厚生労働省医政局医事課試験免許室に電話をかけてくれた。彼女によると、1月に回答したデータが反映されるのは翌年の4月だということであった。急ぐ場合は申請書を書けば良いらしいが、それでも反映されるのに2-3週間かかる、とのことであった。オンライン申請で自動化も難しくないだろうに、ヘンなところで決済やら手作業を挟んでいるものらしい。なんか知らんが、ご苦労なことだ。

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