茶碗にごはんを盛ると、中心から溶岩が湧いた。
音はなかったが、靴が濡れた。
部屋の角に誰かがいて、名前を持たないという理由で許された。
空気が白く、咳をしたら文庫本になった。
ページを開くと、すべての行に「いまここじゃない」と書かれていた。
ホワイトシチューをかけようとして、
「白は記憶を破壊するからやめてください」と言われた。
誰が言ったのかは定かではない。言葉だけがそこに落ちていた。
私はスプーンを机に置いたが、
その机はもう天井に移動しており、
かわりに床が私を観察していた。
フォークを手に取ろうとして、
手の方がこちらを選んだ。
「境界が消えたからには、お前は次だ」
そう言って、壁がこちらに膝を折った。
皿の上に白、茶碗の中に白。
スープはそこに流れていった。
「境界を、見失ってはなりません」
そう書かれたレシピには、材料が記されていなかった。
代わりに、「手」「間」「今」が書いてあった。
部屋には壁があったが、
時間が経つと、壁は向こう側になった。
床を歩いていたつもりだったが、
靴が沈んでいくと、天井がこちらに浮かび上がった。
スプーンを差し出すと、影が伸びて、
フォークのかたちになった。
「これはまだ食事ですか?」と聞かれたが、
その声は口からではなく、
線の消えた場所から聞こえてきた。
白に白を足すと、白が見えなくなった。
白が見えなくなると、見えていたものが白だったとわかった。
ごはんは皿を溶かし、
皿は机を通過し、
机は影を落とさず、
影は言葉を持ちすぎて、
言葉はもう発音ではなかった。
そこにいた何かは、そこにいないものと区別がつかず、
手が物を持つことと、物が手を持つことは同義とされた。
「これはわたしですか?」と
わたしがわたしに聞いたとき、
わたしはすでに質問を終えていた。
音と沈黙のちがいが分からなくなったとき、
すべてが”いま”になった。
その瞬間、溶岩がごはんを吐き出し、
床が天井に伏して、
「境界はどこにもなかった」と
未使用のフォークがつぶやいた。
白が白に触れたとき、
そこにはもう、白すらなかった。
熱も冷たさもない温度、
音のない言葉、
輪郭のない沈黙。
茶碗に盛られた、記憶の白。
かけられたシチューは、境界の名残だった。
皿は床と交わり、
床は空と馴染み、
空は視線の裏側に溶けていった。
スプーンは手に、
手は影に、
影は時間に、
時間はなににもならずに、
ただ、消えた。
わたしは白のなかに立っていた。
それを誰も知らないということが、
とても静かで、うつくしかった。
白
しずく
ひとつ
おとす
わからないところに
わからないまま
/
境界は ふつう あるとされていたが
それはいつも 先に溶けていた
しろ しろ しろ しろ
もう どこからが どこだったのか
:
皿
ごはん
スプーン
ゆびさき
わたし
ひとつの
しろいもの
しろいもの
しろいも
しろ
し
( )
し
ろ
ろ
し
ろし
ろしろ
しろろ
ろろ し
・
とける
しろが
しろに
しろで
しろを
し
し
ろ し
ろしろ ろ
し しろし
ろろろし
/
ことばはなかった
ことばはあった
ことばはしろかった
しろはことばだった
なにもなかった
なにもがあった
・
し
ろ
しろ
しろろ
( )
〓◯⌒ゝしろゐ
ろゝゝ、
ス〆クにて うつろ。
シ—ロ ヒカリカ
コヒン、ロロヲける。
ぱ、ぱ、
し□のなか、かく
くしししくくし
しろろろしゝ
(/)
∵
ゝゝゝゝゝ
しロシ
〓ロ〓し、ロし、
こたえるまえに
かたちが ほどけた
( 〆 )
ろろ…
ろろ
ろろろ
( )
( ) ( )
▯▯▯▯▯▯▯▯▯▯▯▯▯▯
しろ
し
ろ
ろ し
ろ ろ
し …
とけました
↓
↓ ↓
しろしろしろしろ
しろしろしろしろ
しろしろしろしろ
しろしろしろしろ
しろしろしろしろ
しろしろしろしろ
しろしろしろしろ
:
( わたし )
( どこ )
( も )
( ない )
しろがみをひらくと、
しろがみがひらかれたまま、
しろがみだった。
.
..
...
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
しろ
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます